「LION & PELICAN」

1982/12/05発売 フォーライフ FLCF-29033
  1. とまどうペリカン
  2. チャイニーズフード
  3. 約束は0時
  4. 愛されてばかりいると
  5. カナリア
  6. ラブショックナイト
  7. リバーサイドホテル
  8. お願いはひとつ
  9. ワカンナイ
  10. 背中まで45分

「とまどうペリカン」

じぶんの作った歌で、何が一番かなんて聞かれても難しいわけだけど、このアルバムの中の「とまどうペリカン」ていうのが、うっかりするとそういうところに該当するのかもしれないな、なんてぼんやり思ってますよね。偶然にしてはほんとにうまくいった曲だと.....。ただこの「とまどうペリカン」という曲はね、頭で僕が“♪タンランランランラン ランランランラン”てピアノが落ちてくるフレーズ使ってるんだけど、このアレンジは今考えるともっと違ったのがあったのかなぁ、とも思ってるんだけど。


「チャイニーズフード」

これは、まず印象にあるのは、サビにいくときのコードがすごく自分では好きで、偶然うまくいったような調子なんですよね。これ、興味のある人はちょっと、コード譜をどっかで探してみるといいと思うんですけど。


「約束は0時」

「約束は0時」なんていうのは、ちょっとこう、どうでもいい、みたいなやつです。


「愛されてばかりいると」

これも何か吉見(佑子)さんが一時、わいわい言ってたけど。“♪愛されてばかりいると星になるよ”というとこが気に入ってたみたいだけど、これはマイナーなロックで、これも調子のいい歌なんですけどね。だいたい書いてる方としては、つまり“星になるよ”の部分ていうのは曲のオチなわけだから、「どんなオチにしようかなって?」って、それが“星になるよ”じゃちょっとねっていうのはあるよね。「愛されてばかりいると」っていうのは、ウチの奥さんが、例えば子供なんかに対して、基本的に彼女の心が、なんていうのか、獅子は自分の子供を谷に落とすっていうじゃない?そういう優しさってあるでしょ?この子のために厳しい環境でっていう.....。ウチの奥さんはそういう、「愛する子供を谷底に落とすなんてとんでもない!」ってタイプで、「はいはい。寒いですか、じゃあコート着ましょう」って、そういうタイプの人で、そういうのが子供だけじゃなく、僕にも降りかかってくるのはマズイなって、そういう気持ちでこの曲を書いたような気がするんですよね。詞の内容は全然そんなことじゃないんだけど、とっかかりとしてはね。


「カナリア」

割合うまくできてると思ってるんですけど、これは中近東とか、「アラビアンナイト」とか、あそこらへん、「コーヒー・ルンバ」とか、あのへんは日本人にあまり馴染みがないでしょ?盗賊とか、「開けゴマ」とか。ああいうの、馴染みはないけど、何か形にならないかなって思ったんですよね。そんなイメージで書いたんですよ。これはさっきオチとして、“♪いちばん夢見てた人のことを教えて”ってあって、“♪いちばん恋をしてた人のことを教えて”、最後に“♪いちばん大好きな人の名前をうちあけて”。これはやっぱり“決め”として書いて、ちょっと弱いかなぁとも思ったけど、歌っていくうちに、「これでいいかな」って気持ちになっていった記憶がありますね。この曲は川島裕二君がいいアレンジしてくれてる。


「リバーサイドホテル」

今でも覚えてるけど、デモ・テープを適当な英語っぽいやつでギターとベースで“♪トゥッ トゥッ トゥッ”って録って、金子章平に聴かせて、しかも電話で聴かせたような気がするんですよ。「章平ちゃん、今、ちょっと作ったから、聴いてくれる?」って言ってね。「ちょっと待っててね」って、“♪トゥッ トゥッ トゥッ”、それでもう一度、受話器をとって「もしもし、ボリュームこれで大丈夫?」なんて言って。「いいよ!陽水!」なんて言われてね。それで詞を作ってレコーディングしたんだけど、デモ・テープはウィスパー(囁き声)で録ってたから、けっこう高い音が出たんだけど、実際マイクの前でちゃんと歌うととんでもない高さだったわけ。でも、やっちゃったみたいな。相当高いキーで。でもこの“♪誰も知らない夜明けが明けた時”っていう幕開けなんだけど、ここには「うまく詞ができたなぁ」という気分は本当に一割くらいで、90パーセントは「もう適当でいいだろ?」みたいな気分が濃厚だよね、自分としちゃあ。もうそんな。「適当な幕開けでいいでしょ!?」って気分。ここにも『断絶』の時に話したポール・マッカートニーの「The Back Seat.....」って曲の気分があるよね。“♪狭いシートに隠れて旅に出る”なんてとこは。それとこの曲、“♪部屋のドアは金属のメタルで”とかって、こういうのって、「一人くらいは疑問に思わないでぼんやり聴いちゃうかな」って、そういう冗談だよね。この「リバーサイドホテル」はシングル盤にしたんだけど、その時は何の反応もなくて、まぁご案内の通り「ニューヨーク恋物語」ってドラマの主題歌になっておくばせながらヒット曲になりましたけどね。


「お願いはひとつ」

すごく自分で気に入ってるところがあって、メロディと詞の“調和”。まぁ“調和”っていうと随分アカデミックになるんだけど、この曲に、“♪ジキル、ハイドまでがクリスマスプレゼントを買う”ってフレーズが自分では気に入ってて、ここを歌うのがすごく楽しみな曲ですね。この曲は中西康晴が初めてアレンジしてくれたんだけど。


「ワカンナイ」

「ワカンナイ」はね、「こまったな、曲、何作ろうかな」って時に、まぁ必要は発明の母っていうかね、、「そういや“雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ”なんてあったなぁ」なんてよこしまなこと考えて、これをちょっと茶化そうって作ったんですよ。全部知らなかったから、沢木耕太郎さんに電話したんだよね。「沢木さん、“雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ”って、どんな詞でしたっけねえ?」って。その時の様子を沢木さんの文章を借りて説明すると、沢木さん、「ちょっと待ってね。だから、雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ 夏のぉ.....あれっ、ちょっと待ってね」みたいな。その時、沢木さん、わざわざ本を買いに行ってくれたみたいなんですけどね。これも自分では好きな曲で、しょっちゅうコンサートで歌ってますね。でもこの歌の三番でね、歌詞が一行飛んじゃうことがあってね、歌ってる途中で「あれ?」なんてことがよくあります。


「ラブショックナイト」

アレンジは伊藤銀次で、伊藤銀次という人は金子章平からのアプローチだったと思うけどね。いろいろな人がこのアルバムで出始めているね。この曲の“♪アラビアの奥まで子供のためにとはばたいて歌うカナリア”なんていうフレーズは、さっきのウチの奥さんの気持ちがちらっと入ってるんですけどね。


「背中まで45分」

沢田研二さんに曲を書くという話があって、その中の一曲ですね。BANANAのとこでどんどんデモ・テープ録っていって、その中でもこの「背中まで45分」と「チャイニーズフード」もそうだったと思うけど、この二曲は特にいいできだと思ったので、じぶんのアルバムにも入れたいなぁって。でも、BANANAの家での自宅録音だったから、最終的にはカセットにトラック・ダウンしたんだけど、そのカセットをレコーディングに使ったのか4チャンネルで録ったのか、ともかく家庭用のデッキをスタジオに持ち込んだの覚えてる。こういう歌は典型的な、つまり四十五分から十分毎にいろいろなことがあって最終的に今になって、という。でも僕にとって、こういうのは出来過ぎっていうか、作為的に作ってるね。公式通りって言うか.....。作ってて予想外なことがないから、ある種、つまらないんだけど。