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「最後のニュース」
それでこの『ハンサムボーイ』は『NEGATIVE』の轍を踏まないようにってことでしたけど、やっぱりたまには、そういうことも少しはありましたね。ここで大きいのは川原伸司さんが入ってきたっていうことで、川原さんは、このアルバムの「自然に飾られて」とか、「少年時代」とか、「Tokyo」なんかを一緒に作った人なんですけど(ペンネームは平井夏美)、そもそもこの川原さんと出会ったのは、僕が筑紫哲也さんの『ニュース23』の音楽やることになって、それで「最後のニュース」というのを書いたんですけど、オープニングのジングルっていうか、テーマ・ミュージック。それも頼まれて、大瀧詠一さんに手伝ってもらおうって連絡とったのがきっかけだったんです。その前に『ニュース23』 の音楽をやるきっかけもあって、実はこの『ニュース23』が始まる二、三年前にね、僕の結婚の十周年のパーティっていうのがあって、そこに筑紫さんも来てくれたんですけど、それぞれ酔っぱらいながらいろいろ話した中で、僕が筑紫さんに、「またなにかやってくださいよ」って言っちゃったんですね。僕にとっての筑紫さんて、前に10チャンネルで『こちらデスク』って番組やってたときの印象が強いから、「期待してます」とかって。つまりキャスターみたいなことを。筑紫さんその時は外国に取材行ったりいろいろしてたんだろうけど、テレビ辞めて人に見られなくなったからか、風貌とか気にしなくなっちゃってる感じが残念でね。それが再びキャスターやることになった時、「僕が今度この番組やるのは陽水の責任だから、曲を書く義務がある」な〜んて言われて、もちろん筑紫さんの本当の理由は別にあったんだろうけど、それで「最後のニュース」っていうのを作ったんです。「最後のニュース」は「愛は君」のところでも言った“詞の畳み込み”です。いろんなニュースを思いつくだけずらっと並べちゃおう。それは月に行ったアポロだとか、ジョン・レノンやケネディとか、ツェッペリン号の燃え上がったのとか、ベトナムのボートピープルとか、自然保護の原子力、エイズ、B型肝炎、地球保護、大気汚染。中近東、女性の台頭、ストック・マーケット.....でも、このままじゃマズイなぁ、最後の“決め”というのをちゃんと時間かけて書かないとって思いながらも、取りあえず書いておこうと思って最後に“♪今 あなたに Good-Night”って、でもいくら何でもこれじゃ駄目だろうって思ったけど、なんとなくやるのが面倒になって、そのままになっちゃったわけですけどね。それで、もうひとつ、番組の始まりのジングルもやらないといけないし、どうしようかなって思ってて、向こうのスタッフは僕の声が入ってる方がいいって言うから、じゃあハーモニーだけど、誰かいいハーモニーのアレンジしてくれる人はいないかなぁって思って、どういうわけか僕はその時、大瀧詠一さんのことを思い浮かべたんです。連絡つけてもらって、うちの事務所に来てもらったんですけど、大瀧さんはシャイな人だから仕事仲間の川原さんて人を同行してきて、その三人で僕の仕事部屋でああだこうだといろいろな話をしているうちに、川原さんもビートルズが大好きだってことがわかって。それで親しくなって.....。
「ギャラリー」
僕は川原さんに会う前から、「ギャラリー」という曲を作ってたんです。もともとこの曲は吉見佑子さんのことを思って作った歌で、いろいろなアーティスト、いろいろな時代の“華”をずっと見続けて今も見ているというのは、僕から見ると変わってるというか個性的特徴でね、だから“♪だって私はギャラリー ずっと 恋を夢見ているだけの”ってところでは、吉見さんの顔が出てくる。それで、「これ、荻野目洋子さんが歌ったら、いいのになぁ」っていうのを随分前から思ってたんですけど、当時たまたま川原さんはビクターで、荻野目さんもビクターってことで、歌ってもらうことが決まったんですよね。
「少年時代」
「ギャラリー」のB面を何にしようかってことで、川原さんがピアノ弾きながら、随分いろんなB面候補作ができたんですけど、その中のひとつが「少年時代」って曲で、そうやって「う〜ん、B面できたね」「できたねぇ」とか。それが、「でもちょっとこれ、B面じゃよすぎない?」なんて話になっちゃって、「じゃあもう一曲作ろうよ、ちょっとB面向きのやつを」とかって言い出して。このへんの話がこのアルバムのキーポイントでもあるんですよ。だから「少年時代」はそうやってB面用になんとなく“♪夏が過ぎ 風あざみ”くらいは日本語があって、あとは“♪ダラララルルル〜”っていうテープ取っておいてね。でも、じゃあ、何にするでもなかったんですけど、そんな時に安孫子さん、つまり藤子不二雄Aさんが『少年時代』って映画を作るってことで音楽の依頼があって、それと荻野目さんのB面候補だったこの曲が結びついたんですね。安孫子さんとは、マージャンとかでちょっと知り合っていたし、どういうわけか僕の子供に「オバQ」のカレンダーとかくるんですよ、まめに。「やるなっ」って思ってたんですけど。
最近「少年時代」が教科書に載ったんですが、ボクが若いころの記憶でいうと、そんなところにいっちゃいけないという自覚もあるんです(笑)。「あまり軽はずみなことはしないで」とか言われかねない状況で、そういう環境にいるのも楽なんですけど。でも、それを壊していかないとまずいなという気がして。
「自然に飾られて」
まだ“セフィーロ”のコマーシャルやってるときに、川原さんとスタジオに入ってピアノ囲んで、「もう曲なんてすぐできる」とかって、最初はCMのために三十秒くらいのをササッと作ったから、サビが先にできた曲ですね。それに後からAメロつけて、とかって右往左往したけど、川原さんもね、ビートルズがローリング・ストーンズにササッと曲をプレゼントした“I Wanna Be Your Man話”をよく知ってる人で、サッとやっちゃうっていう価値観持ってた。そのうちに、「これはアルバムに入れるべきだ」ってなっていって、事務所のスタッフなんかも「陽水さん“セフィーロで流れてる曲は何ですか”って問い合わせが随分多いんですけど」なんていう声に乗せられて、こんなことになっちゃったんですね。
「Tokyo」
川原さんとピアノで遊んでいるとき、「ビートルズの、『Till There Was You』なんて曲をちょっと弾いて」とか言ってて、だいたいは「Till There Was You」のコードっぽいやつなんですけど、川原さんなりの工夫というのが何かあるらしいんだけど、本人の弁によると。これは全然最初歌詞がなかった曲ですけど、“Tokyo”ってひとつコンセプトがはっきりすると、歌詞は作れるんです。安易系の曲ですけどね。
「フィクション」
まず“フィクション”て言葉があって、何かフィクションて歌になるなぁって、それだけのキッカケだよね。きっと誰でも“いいなぁ”と思ってる人はたくさんていうか、いると思うけど、思ってるだけというのはフィクションで、もっと言うと、なんか付き合ってて愛の交流とか気持ちの交流とかできてるように見えるけど、それもやっぱりフィクションで、なんかだんだん話がお寺方向、禅宗方向に行くんですよね。
「夢寝見」
ブライアン・フェリーみたいな、あんな感じの、あんなタッチのができたらなぁってデモ・テープ作り始めた曲です。
「ライバル」
BANANAに「何かサウンド作ってくれないかなぁ。僕、適当にメロディと詞を書くから」っていって、彼がサウンド作って、僕はそのサウンド聴きながらメロディと詞を作ったやつです。これなんかも新しい作り方ですよね。この曲のレコーディングの時、ドラムスの山木くんとかコーラスの吉田美奈子さんとか、皆集まってるのに、要のBANANAが来ない。雪がずいぶん降っていた日で、なんか皆で彼を待ってた記憶がありますね。
「長時間の飛行」
BANANAとだね。オケを先に作ってもらって後でメロディ作ったんですけど、飛行機の中というのは、いつか歌にしなきゃいけないって思ってたんですよ。「飛行機の中はなんかあるよなぁ」って。
「Pi Po Pa」
パーカッションの浜口茂外也が自分のバンドのアルバム出すっていうんで提供した曲ですね。デモ・テープ渡すとき、どういうわけかお父さんの浜口庫之助さんの家に行って、ハマクラさんがまだ生きてる時で、みんなでこの曲のデモ・テープ聴いたんですけど、服部良一さんとかハマクラさんとか、もう神様っぽい人だから「そういう人の前でデモ・テープ聴くのは、すごく嫌だなぁ」って思ったけど、音は流れ始めちゃって、ハマクラさんは聴き終わって、「う〜ん。なんか、そんな難しくしなくてもいいのになぁ」なんて言われたのが、今思うと最後になってしまったんですけどね。
「エミリー」
メロディすごくよくできてると思ってるんだけど、ひっかかりのない平坦な詞になってて、つまらない歌だ、つまらない歌だって時々言ってるんですよ。でもこの曲が好きだって人もいらっしゃるわけで、この曲はよくない、よくない、なんていうのはよくないなぁ、慎まないといけないと思って。