「UNDER THE SUN」

1993/09/15発売 フォーライフ FLCF-30220
  1. Be-Pop Juggler
  2. 11 −イレブン−
  3. 水瓶座の夜
  4. Power Down
  5. Make-up Shadow
  6. カナディアン アコーデオン
  7. 鍵の数
  8. ストイック
  9. 5月の別れ
  10. UNDER THE SUN
  11. 長い話

「UNDER THE SUN」 〜アルバムについて〜

 『ガイドのいない夜』を作った後、7、8割方曲ができていたので、すぐオリジナル・アルバムを出したいと思ったんです。ところが曲があるから簡単かなと思ったら大まちがいで、半年以上かかりました(笑)。始めるとき「今度のアルバムのコンセプトはアップテンポ中心です」と言ったら、作曲家の平井夏美さんに、そんなのはコンセプトじゃないって、笑われましたけど(笑)。なんでアップテンポかというと、コンサートでやれるメジャー系の曲が少ないので、ここらで一挙に挽回したい(笑)。コンサートでそういう曲をやると、よく聴こえるんですよ。1万人の前で、しっとり「ジェラシー」とはいかないときもあってね。
 アルバム・タイトルは、いろんな候補をひとりごとのように言って、スタッフの顔色を見てると、『UNDER THE SUN』の反応がよかった(笑)。ボクは、夜だ月だ星だで、ずいぶん長いこと曲を書いてきたんです。「太陽の下で恋愛? なに言ってるの」という感じで。でも、その主張もあまり長いと飽きるので、なんとか昼間のムードを出そうと(笑)。

僕の歌はあまりにも夜だ星だっていうのが多いから、この辺で、“太陽の下”に出てみるのはどうかということで、『UNDER THE SUN』というタイトルにしました。いろいろと候補はあって、『釣りと狩り』なんてのはどうかと(笑)。でもそれは却下された。でも、昼だって強調してるのに、相変わらず「水瓶座の夜」なんて曲があるのが僕らしいんじゃないですか。前回『ガイドのいない夜』を出した時には、混迷する現代社会はガイドを失っているという説明をしたのですが、今回はそれを抜けでて太陽の下にやってきた───まあ、そんなストーリーを思い浮かべていただいても、こちらとしては一向に構いません。

 デビューして10年ぐらいは、ただおもしろいだけだったですね。その後だんだん、どういうスタジオやスタイルでレコーディングするのかを考えはじめた。今回もバンクーバーに行ったんです。前にk.d.ラングのCDを聴いたらよくて、彼女が使ったスタジオとミキサーだというので、それで決まりだと。いいミックスでしたが、ほとんど使わなかった(笑)。今はまだいろんなレストランを覗いている段階で、「あ、混んでる」とかね(笑)。 あまり合理的にレコーディングが進むと、いいのかな、それはちょっとあぶなっかしいなって思うんですよ。レコーディングは、やってるときは大変だけど、いろんな局面でジャッジしたりプレイしたりするのはおもしろいですね。なぜこれがいか、理論的には説明できないけど、よさそうな気がするとか(笑)。 競馬の素人が二人いても、妙に当たる人と当たらない人がいる。普通、当たる人のことを「強い星の下に生まれた」と言うわけですけど、ボクに言わせると、絶対当たらない人も貴重なわけ。裏を買えば必ず当たるわけだから(笑)。何度も演奏しなおすのは、たとえよくても、いいと言えない性があるんですね(笑)。のたうちまわらないと、仕事した感触がないというか。女性は子供を産めるけど、男性は産めない。それで地球上に陣痛の痕跡を残したがるせいだ、という説もありますけどね(笑)。 今回、歌入れのとき、スタジオのボーカル・マイクのコードがとぐろを巻いてたんです。ラインは短いほどクリアな音が録れると思ってるから、長いとイヤだなと。みんな気にしなかったんだけど、佐藤準が気がついて、ダメだと言って直させた。 彼はボクにとっては登場の仕方がすごくよくてね。最初のリハーサルに3、4時間遅れてきた(笑)。そこまで遅れてくると、普通プレイはすごいと思うでしょ。でも、彼は全然ダメで(笑)、いや、こんなにおかし人がいるのかな、さぞかし名のあるお方だろうと(笑)。聞いてみると、おニャン子だ、光ゲンジだとかをやっていて、こりゃいいやと(笑)。それでいて責任感があって、バランス感覚もある。 人間って環境の動物で、そこらへんの鼻たれ小僧でもバッキンガム宮殿に5年もいるとそれらしくなるでしょ。最近「少年時代」が教科書に載ったんすが、ボクが若いころの記憶でいうと、そんなところにいっちゃいけないという自覚もあるんです(笑)。「あまり軽はずみなことはしないで」とか言われかねない状況で、そういう環境にいるのも楽なんですけど。でも、それを壊していかないとまずいなという気がして、「Make-up Shadow」は、もともとアイドルのために作った曲だから、ちょうどいいなと思ったりしてるんですけどね(笑)。


「Make-up Shadow」

「Make-up Shadow」は、佐藤準のスタジオに遊びに行ったら、彼がアイドルに曲を用意していたんです。ぼんやり待ってる間にメロディーが聴こえてくるので、あらかた作詞して、見せてみた。「アイドルより、もうちょっと歳とった怪しげな女性がいいんじゃない? いや、むりやりボクの歌詞を売りつけるわけじゃなく、だめだったら遠慮なく他の人に依頼してくれたらいいけど、まあ、いちおう、できてるわけだから」って(笑)。でも、女性歌手がなかなか探せなくて、そのうち自分のアルバムに入れたらどうだろうと。そんなこんなで、デモ・テープを聴かせると、「この曲がいい」という声が多くて、『素晴らしきかな人生』の主題歌になりました(笑)。

おかげさまで「Make-up Shadow」がヒットして、ホントに嬉しいんです。この嬉しさを、どのように噛み殺すのかが大変なくらいです(笑)。ちょうど同じ時期に、松任谷(由美)さんやサザンもドラマの主題歌担当して、それでいろいろと比較されましたけど、僕にとってこれらの人達って、へんな言い方だけど“雲の上”みたいなところがある。だからそうした人達と同じレースができただけで僕は満足だと、所属レコードの社長にもいいました(笑)。でも、不思議なことにこの三曲、マイナー調でテンポもほぼ同じ。実は事前に三者で打ち合わせたんだ、という冗談が、しばらく流行ったんです。本当のところは偶然ですけど。


「カナディアン アコーデオン」

「カナディアン アコーデオン」の筒美京平さんには、歌詞を渡してメロディーをつけてもらったんです。曲はテープと譜面で届いたんだけど、彼一流のダンディズムというか、耳のいい人じゃないとメロディーが追いかけられないようなテープで、まちがったまま吹き込んでしまった(笑)。それで、「曲線の道」という歌詞の「の」の部分なんですけど、「すみません。メロディーまちがえて、レコーディングしちゃいました」と謝りの手紙を出しました。「完璧なメロディーですごいんだけど、よりいっそう完璧なものにしますから、それには傷がないといけない」とか書いて(笑)。この曲は音域が広いし、「旅行く人に・・・・・・」のメロディーはアブストラクトだし、難しい曲で、「ほー、井上陽水、歌手だって言ってるね。じゃあ、歌っていただきましょうか」といわれてるような気がしました。ほんとに、絶対自分じゃ考えられないものがあるところが新鮮ですね。 


「Power Down」

「Power Down」は、最初、佐野元春さんのバンドのギターの長田進くんにアレンジをお願いした。それはそれでよかったんですが、レコーディングしているうちに気分が変わってきて、カリンバを入れ、ドラムのフレーズを3番から1番に移植し、ディレクターが機械のドラムを入れ、間奏に長田くんのギターを移植し・・・・・・とかしてるうちに、アレンジャーがいなくなったんで、ボクの名前になってるんです。この曲のようにベースの入ってないロックンロールもおもしろいなと思って、アルバムの1曲目に入れたかったけど、いきなり「Power Down」ってのも、ちょっとあいさつがキツイかなと(笑)。


「水瓶座の夜」

3年前に車に乗りはじめてから、音楽をよく聴くようになったんですよ。それまでは、レコーディング中に、カセットにダビングしてもらったのを持って帰っても聴かなかったけど、いまは車で聴きなおしたり、メロディーが浮かんだら、これに吹き込んだりとかね(とマイクロ・カセットを見せてくれる)。 子供がかける音楽も耳に入ります。ユニコーンとかザードとかいろいろ。車の中で数時間も聴かされているうちに情が移ってきてね(笑)。2、3年前はボクのを聴いてるときもありましたけど、さすがに今は中3ですから(笑)。「水瓶座の夜」に子供の声がコーラスで入ってるんです。昔、ビートルズの世界にオノ・ヨーコやリンダ・イーストマンが入ってきたとき、いやな感じだなと思った記憶があるんですが、今は自分がそのいやな感じをやろうとしているのかな。甘えかな、親バカかなとか思いながら、「冗談です」とか「子供向きの曲だから」とか言い訳しつつ(笑)。


「五月の別れ」

「五月の別れ」なんか十年近く前の(曲)じゃないかな。そのときは詞がつけられなかった。