「九段」

1998/03/18発売 フォーライフ FLCF-3711
  1. 炎熱の月明かり
  2. SINGING ROCKET
  3. 英雄
  4. 最新伝説
  5. アンチヒロイン
  6. ラブレターの気分で
  7. ロングインタビュー
  8. TEENAGER
  9. エンジの雨
  10. ビルの最上階
  11. 長い坂の絵のフレーム

「炎熱の月明かり」

これは忌野清志郎との共作です。前作の「永遠のシュール」の中の「野蛮な再会」とともに2曲一緒に作りました。最初はアコースティックギター一本でやろうかなと思ってたり、PAD(シンセの持続音)と人工的なリズムのアクセントと抽象的なエレキギターで仕上げようかなとイメージした時期もあったりと、色々な変遷を経てこういうラフなアレンジになりました。バックは「井上陽水奥田民生」以来のDr. Strange Love。清志郎と(その部分を)どっちが作ったか忘れてしまったのですが、「進むべき道を照らしておくれお願い」という歌詞が、いいなぁと思って。何か自分に対しても、時代に対してもいいなぁと(笑)。まあ、これがアルバムの幕開けになっています。


「SINGING ROCKET」

ちゃんと形になっていない、俗に言う未発表っていうんですか? 曲のデッサンというかDemo Tapeが山ほどあって、それを一緒にやっているスタッフと聴く機会があったのですが、そのスタッフが「この曲いいじゃないですか」と。僕、結構そういう言葉に弱いんですよ。昔書き溜めた曲って、もはや自分ではどれが良いのか悪いのかわからなくなってきている。周囲の意見に左右される傾向がありますね。自分の中で頑固一徹の部分もある一方、全然くらげみたいにふにゃふにゃで捕まえどころがない所もあるし、二律背反というか、そういう自分の性格も面白いなあとか思っているんですけど。まあとにかくスタッフの一言で「そんなにいいかねえ」とか言いながら、形にしてみようということになりました。その時点ではメロディーの一部と詩が未完成だったので、手を加えて今の形になりました。なんといってもこの曲で一番気に入っているのは、「プシュー」(笑)。これが一番目玉じゃないかな。「SINGING ROCKET」の意味? 自分も含めて、"歌い手" を憐れんだりからかったり、そんな感じかな?


「英雄」

伊良部とか長谷川とか、今年になるとヤクルトにいた吉井とか段々大騒ぎになって。でも結局一番最初に行った人ってすごいことだなあと思ってね。中にはタイムリーな話題じゃないからどうなのかなという意見もあったけど、やっぱりタイムリーとかなんとかではなく永遠にすごいんじゃないかと。先駆者って、いつの時代でも評価していいんじゃないかという気持ちです。録音は全部MANGROVE STUDIO。リズムマシーン、シンセ、アコースティックギターだけで作りました。ミキサーの宮崎のアイデアでナッシュビルチューニングを試しました。今年の野球? ん〜やっぱり阪神にはがんばって欲しいけどね(笑)。この間、藪のナックルだかチェンジアップだかを「やぶからボール」というんだとプロ野球ニュースでやってて(笑)。なかなかのネーミングだなあと(笑)。パ・リーグは、強いっていうとオリックスかな。阪神とオリックスの日本シリーズ。見てみたいような見たくないような(笑)。


「最新伝説」

4〜5年前から出来てた曲なんだけど、今回のレコーディングで俗に言うサビ始まりに変えてみたり、それから平井夏美さんに協力してもらったりして。レコーディングが始まった5月の時点では一番形になってなかった曲でしたが、何とか完成させることが出来ました。僕らの年代の応援歌みたいなものが作れないかっていうことが基本にあって。1000ジュゴン?ジュゴンが1000いるっていうことです(笑)。結局仕上げるのに年明けまでかかって。いやいや、最後まで楽しいレコーディングでした(大爆笑)。


「アンチヒロイン」

布袋君に詩を渡して曲を書いてもらいました。詩がすごく短いし繰り返しもなくて、大変だったろうと思うけど、なかなかいい感じに仕上げてくれました。布袋君のギターはやっぱりすごいよね。コーラスもいい雰囲気だし。特にイントロから歌の始まるあたりまでの空気感はさすがだなあと。でも難しいよ、この歌(笑)。歌入れに3年かかった(笑)。


「ラブレターの気分で」

なんだかんだいいながら、結構手紙書いたりFAX送ったりしがちな男でね、僕は。振り返ると、高校時代あたりからラブレターを書いたりもらったりしてたのかなあ。最近もそういうことをしている人もいるんだろうけど、基本的には少なくなってるんじゃないかなと思ったり。携帯とかポケベルとかあるしね。まあ、ラブレターの効果、効能をみなさんもう一度検討してみて下さい(笑)。相手の気持ちがいつでも取り出して見れるという恐ろしい世界が(笑)。恐いけど、恐いと同時にね、そういうことが全然残らない人生を想像してごらん。気に病むことはなくなるかも知れないけど、きっとパサパサした人生だと思うよ(笑)。これはもう大事なところで、苦労を避けていくとパサパサするという。いい話だねえ(笑)。


「ロングインタビュー」

HAWAIIAN LOVE SONG という曲は、リリウオカラニ女王という人に捧げた曲なんですけど、この「ロングインタビュー」も捧げもので。ビルマって歌詞の中にも出てくるけど、アウンサンスーチーさんに捧げているんです。この人にインタビューしているシーンを思い描き、応援しているというわけで。軍事政権に対しての民主化運動を。これでねぇ、なるほどと言われると下品なんだよね(笑)。そんなことだったのみたいな(笑)。


「TEENAGER」

もう、なんだかんだ言いながら子供が3人いてね、まあ子供が友達つれてきたり、彼らの好んでいる音楽とかファッションとか、そういうことに囲まれて暮らしているわけです。そうなるとどうしても10代というのが人ごとではない状態なもんで、これは一つ形にしない訳にはいかない。例えば15年前くらいだと「最近若い奴等が作っているモノがちっとも面白くない」っていう感じが僕にもあったし、回りでも割と一般的な意見だったと思う。ところがこの頃はそうでもないなあと。10代とか若い人が作ってくる音楽が結構すごいなあと思うようになった。そんなことも「TEENAGER」を書いた理由でもあるんだよね。僕の意識の方が変わったのかもしれないけど、客観的に見ても今の若者は面白いものを作る人が多いといえるんじゃないかな。この曲は先行シングルなんだけど、ジャケットも中村ミツル君というまだ19才の若いイラストレーターにお願いしました。福岡で活躍している才能あふれる人で、たまたまTVで特集していたのを見て依頼したら、快く引き受けてくれました。プロモーションビデオを作ったんですよ。半年ほど前にデジタルビデオカメラを購入したんですけど、家族で旅行に行ったりとか、なんだかんだで3イベントくらい撮ったのかな? そうこうするうちに今回のプロモーションビデオは自分で作ろうなんていう話になって。それならあれをうまく組み合わせて形にならないかなと。足りない部分はまた撮ったり、最終的には映像のプロの人に手伝ってもらったりしながら完成しました。プロモーションビデオを自分で作るのは「最後のニュース」以来かな? まあ、大変だったと言えば大変だったし、楽勝だったと言えば楽勝だった(笑)。


「エンジの雨」

メロディーはもちろんですが、コード進行が気に入っているんですよ。アレンジは菅野よう子さんにお願いしました。どんなアレンジにしようかと考えたときに、ストリングスを入れようということになって。でもただ単に綺麗なストリングスが入っていてもつまらないなあと。僕らの仲間内で使う言葉で "斜めに" という表現があるんですが、ちょっと斜めな感じの弦アレンジを出来る人は誰だろうかということになりまして。それは菅野よう子さんをおいて他にないでしょうと。お願いしたら思ってた以上にいいものが上がって。なかなか素敵なアレンジだと思っています。彼女がスタジオで弦の指揮をしている姿とか、時々問題点とか注意点とかを指示する感じとかを見ていると、すごくてきぱきしていて頼もしかった。僕も含め、僕のレコーディングスタッフにとって、"頼もしい" っていうことが一番ショッキングなことでね(笑)。ああ、素晴らしいなぁと(笑)。


「ビルの最上階」

言葉をたたき込むというのか、トーキングというのか、美しいメロディーがないとでもいうのか。言葉を優先して作ったヤツで、祖先は「最後のニュース」なんですけど。最初はビルの15階からどんどん下に行けばいいかなと思って作っていたんだけれど、途中で飽きちゃって。7階くらいまで書いていたんですが、その後詩を書くのが面倒くさくなり「7階から下は全部ラブホテルのフロア」でいいやと。そうしたら片付くなあと。そうやってズルをして置いといた曲をレコーディングをすることになり、始めてみたもののさすがに横着しすぎというか、はしょりすぎというか(笑)。もうちょっと何とかしようと思って、"建て増し" したわけです。 これはBANANAにアレンジしてもらいました。特に優れているなぁと思ったのは、イントロでシンセだけのパートから他の楽器が一斉に入るところがあるんだけど、ここの始まる気迫。のんべんだらりとスタートしない感じがすごい。BANANAの気迫が感じられて素敵だなと思って。BANANAならではのシンセベースの動きも気に入っています。


「長い坂の絵のフレーム」

小島良喜というピアニストがいるんですが、これがなかなかの侍で(笑)。彼のピアノを相手に歌った曲です。小島君は2〜3年前の僕のライブを手伝ってもらったりしたんだけど、その後ニューオリンズに音楽の拠点をおいて日本と行ったり来たりしている。久々に弾いてもらったら、やっぱりニューオリンズで腕を上げたんじゃないかなと思った。前はすごく饒舌なピアノというか、細かいところまで上手だっていうことがとてもよくわかる人だった。今も当然上手いんだけど、上手いなあというのが控えめになったんじゃないかな。それがさらに良くなったと思う点。サビのメロディーとコードの関係が自分では気に入っています。B♭mのコードの所のメロディーの流れがうまくいったなあと思っています。